難聴児の早期発見・早期療育推進のための基本指針への意見

各地方公共団体における保健、医療、福祉及び教育部局並びに医療機関等の関
係機関の連携をより一層推進し、難聴児本人及びその家族への支援につなげる
ための方策について、厚生労働省及び文部科学省が連携し検討を進めるためのプロジェクトの指針を「難聴児の早期発見・早期療育推進のための基本方針作成に関する検討会」が作成しています。この方針案に関する意見の募集に応じました。2022年1月8日提出。

<意 見 書>

難聴児の早期発見・早期療育推進のための基本指針への意見

難聴児の早期発見・早期療育推進のための基本指針につき、きこえない・きこえにくい子どもを持つ保護者の立場から意見を申し上げます。推進するための計画に反映をお願いいたします。

(該当ページ:1)

方針案タイトルおよび1.総則―

「難聴児」とは軽度難聴中等度難聴を指すと思われる恐れがあるため、「ろう児・難聴児」または「きこえない・きこえにくい子ども」に変更するか別の用語を使用してください。当事者にとって「ろう児」と「難聴児」は違うものである。新たに定義を加えるか名称を変更してください。

(該当ページ:1)

総則―(2)難聴児支援の基本的な考え方―<早期発見の重要性>

「難聴は、早期に発見され適切な支援が行われた場合には、音声言語発達等への影響を軽減する」とあるが、「音声言語発達」を「言語発達」に変更してください。理由は音声言語とは聴覚を利用した言語であり、聴覚を主にした支援を行うととらえかねません。また、「言語習得」を「日本語のみの習得」と読み替えてしまうと、結局は、聴者のマジョリティに合わせていく生き方を生涯にわたって続けざるを得ない状況になります。

ここでいう「言語」は、手話・日本語であると定義を加えてください。

(該当ページ:2)

総則―(2)難聴児支援の基本的な考え方―

<学校や障害児通所支援事業所等関係機関における取組の重要性>

専門性を持った職員に「手話を身に付けた」を追記してください。

軽中等度難聴児や人工内耳装用児においては通常の学級に在籍することがあるとあるが、それならばなおさら手話を身に付けた専門性をもった職員(言語聴覚士等)が必要と考える。手話は社会に出た時に必ず必要とする言語である。また、ろう学校に勤める言語聴覚士も中立機関に勤める言語聴覚士もすべて手話を獲得する必要があると考える。

(該当ページ:3)

<多様性と寛容性>

「多様性を認め合う寛容性をもった社会」という言葉は一面、誤解を生み出す恐れがある。多様性を認め合う寛容性を持った社会はもちろん重要な事であるが、寛容性をもった社会を享受するどころか音声言語のみ獲得した成人した当事者は集団の会話に入れず孤立を感じているという実態がある。また、企業が手話通訳者の存在を知ってても当事者が手話を知らないので派遣できないというケースや派遣されたとしても自身の手話能力不足から充分に活用できない状況にある。その実態から踏まえて、手話言語を主流とした多様性を伝えていく必要があると考える。そのため、「療育及び教育を受けられる環境」を「療育及び手話による教育を受けられる環境」に変更してください。

(該当ページ:5)

(2)地域の実情に応じた取組 ②地域における支援

<協議会の設置>

現状では医療機関、教育機関などの関係者は社会に出た当事者の心理面を理解できていない。当事者が生きる社会の実情*をふまえた情報交換を行うと明記してください。

*社会に出て聴者とコミュニケーションが必要になった時、自分が音声で話しても相手が聞き取れていなかったり、補聴器・人工内耳をしていても集団では相手の話を理解できず対等なコミュニケーションが成立しているとはいえない等

(該当ページ:5)

<多様な関係者の参画>

「言語発達に詳しい言語聴覚士」とあるが言語発達に詳しいのは勿論、その上で「手話を扱えるろう児・難聴児心理に深い見解を持った言語聴覚士」に変更してください。

(該当ページ:6)

④学校や障害児通所支援事業所等関係機関における取組<支援の専門性向上> 

聴覚障害教育の専門性向上のためには、聴覚障害者に関する教育の領域に手話言語も必要と考える。よって、免許状には全国手話検定試験3級(2級が望ましい)の資格を取得するとより聴覚障害教育の専門性が向上する。アメリカには聞こえない事を受容し、自分を肯定的に受け止め、アイデンティティの確立につなげる為に「ろう者学」がある。日本で切れ目のない支援*を実現するためにろう者学を取り入れて指導をして頂きたい。指導がないと、当事者が人との関わり方が分からないまま過ごしてしまい、将来、周囲との関係性が上手く築けず壁にぶつかってしまう。

切れ目のない支援*

長期的な視点で難聴児本人の障害認識、自己実現、社会参加を促す知識及び技術のこと

参考: ろう者学教育コンテンツ開発プロジェクト(deafstudies.jp)https://www.deafstudies.jp/

聞こえないことを受容し、耳の聞こえない人たちがどのようにして生きているのか、ろう者がどのような生活を送り、どのような形で社会に参加しているかを研究する学問であり、その発展と成果をろう児・学生が享受して、ろう者として生きるためのアイデンティティ確立を支援するための学問

(該当ページ:3)

難聴児の早期発見・早期療育推進のための方策―(1)基本的な取組以降

各種連携体制や情報共有には、医療機関、市区町村及び医師会等医療関係団体とあるだけで、教育機関と当事者団体が含まれていないので、専門教育機関のろう学校にも情報共有されるよう求める。もしくは各種連携体制や情報共有を扱う中立機関の全国設立を強く求めたい。(現在の例:福岡県、石川県) 福岡県の「聴覚障害教育支援NPO法人言葉の森くるめ」、石川県の「いしかわ赤ちゃん聞こえの相談支援センター 通称『みみずくクラブ』」を全国の中立機関のモデルとして頂きたい。人工内耳や補聴器どんな選択をしても手話が必要だと私たち当事者は考える。その理由をしっかり伝えていける機関であることが必要である。

参照:「聴覚障害教育支援NPO法人言葉の森くるめ」http://kotobanomori.main.jp/index.html

「難聴児の早期発見・早期療育推進のための基本方針作成に関する検討会 (第3回) 」https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000796874.pdf

アイデンティティ確立(自分を肯定的に示す)の為にも手話は必須であり、一人一人の人権が保障され、共生社会構築の為に一人一人にできる事は何か、それをろう学校という教育現場で早くから育てていく事が重要と考える。

聴覚特別支援学校等の教員の専門性向上に向けた取組を充実することとあるが、当事者の声を取り入れた専門性向上のためにも、教員にはろう児・難聴児のロールモデルとして当事者の先生を積極的に採用してほしい。将来、音声言語のみ取得した難聴児はコミュニケーションが必要になった時に、音声言語のみではコミュニケーションが成り立たない状況に愕然とする。ろう児・難聴児が社会に出た時にどのような配慮があると助かるかを伝えられる力を身につける為にも手話とろう者学を学校で学べる環境を子ども達のためにぜひお願いしたい。

                                     以上

全国きこえない・きこえにくい子どもの親の会

代表 仁宮 智子

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